Entry

2017年09月

Gマスターシリーズ撮影会

 2017年9月19日、ラインナップの揃ったソニーのGマスターシリーズのレンズを一堂に会し、あらためて試写する機会を設けるという主旨で、カメラメディア関係者向けのモデル撮影会が都内・某スタジオで開催された。

 撮影会の内容は、Gマスターシリーズの特徴についてのレクチャーを受けたあと、あらかじめ設定されたレンズやカメラの特徴を活かせる4つのシチュエーションにおいて、参加者は用意されたカメラでモデル撮影ができるというもの。

 従来も、新製品発表会でモデル撮影などの機会が設けられたことはあるが、いずれもデータの持ち帰りは不可であった。しかし、今回は新製品はないものの、データを持ち帰ることができるのがポイントとなっている。

 ソニー機でモデル撮影といえば、やはり瞳AFに話題が集中する。瞳AFについては特許が関連しているのか、それとも他社の技術力が及ばないのか、他社ではミラーレス機で瞳AFに対応しているメーカーもあるが、顔認識まではできても測距点と瞳を連動してAFする機能のないメーカーが多い。特に35mmフルサイズセンサーで、瞳AFができるのはソニーだけの大きな特徴と言える。

 撮影のシチュエーションは4つ設けられた。

一つ目は、キッチンを背景に16-35mmF2.8と24-70mmF2.8で、瞳AFを試すというもの。

20170920155221.jpg

 FE 24-70mm F2.8 GM 絞り開放、α9で撮影。自然な空気感の描写がいい。

 瞳AFはソニーのお家芸とも言えるが、実戦でどの程度効果があるかはやはりモデル撮影などでしか確認できないので、いい機会になった。中でもフルサイズ機で特に優れているのはやはり最新のα9である。会場でのカメラの設定は、レンズのファンクションボタンを押すと瞳AFになる設定にしてあり、一旦ボタンを押せば、モデルが右を向こうが左を向こうが、こちらがアングル調整で移動してもα9は測距点が瞳を捕らえ続ける。シャッターボタンを押してもすぐに復帰して、瞳にピントを合わせ続ける。α9以外のカメラでも瞳AFは可能だが、レスポンス性はやや劣るようだ。

20170920004336.jpg

  FE 16-35mm F2.8 GM 絞り開放、α9で撮影。

こんな感じで、モデルが上を向こうが下を向こうが忠実に手前の瞳を追い続ける。これは、ポートレート撮影が主体のカメラマンでは必須の機能になるかもしれない。でも、あまりにも簡単に瞳にピントが合ってしまうので、もはやカメラマンの職人芸は不要になる?まあ、カメラマン不要論はさておき、少なくともモデルのいい瞬間を捉えやすくなるという意味で非常に有効な機能と言える。

 2つ目に筆者が向かったシーンはろうそく光だけで撮影するシーン。ソニー的には、α7SIIの実力を示したかったということだろう。

20170920004337.jpg

FE 85mm F1.4 GM 絞り開放、α7SIIで撮影。実際にはほぼ真っ暗な条件でろうそく光だけで撮影。

 実際の撮影をこんな風にろうそく光でやるかとなると、まずないとは思うが、雰囲気が出ることは確かだ。思えば巨匠・キューブリックが、CarlZeissのPlanar 50mm F0.7というレンズを特別に用意させてろうそく光だけで室内撮影を行った「バリー・リンドン 、1975年」という映画があったことを思い出す。上の結果を見ると、現代ならF1.4でも通常撮影みたいに映画撮影が可能ということになるだろう。

 このシーンで気になったのは、瞳AFがうまく作動しなかったことだ。もちろん通常のAFは作動したが、暗すぎたかコントラストが大きすぎて顔認識まではできなかったようだ。でもこの条件で普通の撮影みたいに明るくシャープに写ってしまうところはさすが。

 

3シーン目は、リビングルームの設定でライティングを含めて試すというもの。このシーンではProphotoさんの協力により、電波制御のコマンダーがついたαが用意されていた。下の作例はストロボなしのもの。ごめんなさい。

20170920004338.jpg

FE 85mm F1.4 GM 絞り開放、α7RIIで撮影。モデルの立体感、背景の奥行き感が自然。

ピントの合ったところはシャープで、背景はエッジが柔らかいソフトな美しいボケが得られている。このあたりはさすがアポダイゼーションフィルター付きのレンズを出しているメーカーだけあって、ボケ味の構成は秀逸と言える。モデルの肌の輪郭部分などにも色にじみは見られず、軸上色収差もよく補正されている。

 

最後の設定はアポダイゼーションフィルターで話題の、FE 100mm F2.8 STF GMで、前後に点光源を配置したシチュエーション。

20170920004339.jpg

FE 100mm F2.8 STF GM 絞り開放、α7RIIで撮影。ボケのエッジは目立たず点光源は球形状のボケになる。

前後にLEDライトを配置して静物写真風に。通常のレンズでは、後ボケをソフトにすると前ボケが2線ボケになってしまうが、アポダイゼーションフィルターはボケの形を強制的にソフトにしてしまうので、前ボケも後ボケもソフトになる。FE 100mm F2.8 STF GMは、フィルターなしでは2線ボケが出るほどシャープなレンズの特性にしているそうだ。よって、ピントが合ったところは超シャープでありながら、前後のボケはソフトになっている。

 

20170920004340.jpg

FE 100mm F2.8 STF GM 絞り開放、α7RIIで撮影。モデルの肌と黒髪のコントラスト再現(MTF)がすごい。

モデル撮影では、背景にLEDが配置されていた。モデルの目の部分は極めてシャープに描写されていて、カラーコンタクトの網点まで写っていた。背景は周辺が柔らかくなる球形状のボケが得られている。絞り開放で撮影しているが、画面周辺部でも口径食がほとんど見られない。

 

 短時間のうちに4名のモデルさんを次々に撮影する機会というのはあまりないが、Eマウント機とGマスターレンズで撮影できる世界を一目瞭然に確かめることができた。まずα9の瞳AFの能力は非常に高く、ポートレートでもその実力をいかんなく発揮したと言える。そのほかの機種も明るい条件ならまずまずのレスポンスで、満足できるレベル。Gマスターレンズはさすがに素晴らしい描写性能と言えるが、特徴としてはどのレンズもシャープネスとボケ味の美しさを両立している点だろう。

 これだけ楽にポートレート撮影が決まるということになると、今までの苦労はなんだったかと思うが、これもカメラ技術進化の成果であって、次なるカメラマンの仕事はもはや撮影ができることでなく、シチュエーション設定であったり、構図やシャッターのタイミングを選ぶ仕事ということになって来そうだ。

 ただ、構図やタイミングもAI化される可能性が高いので、どこまでカメラ技術が進むのか?

 ミノルタのα7000で、一眼レフ初のAFが実現された時、そのうち人が笑ったらシャッターが落ちるとか自動シャッターの時代も来るかもしれないという冗談を言い合っていたが、同じような機能はすでに実現されているし、現在では動態追尾などさらに高度な機能も実現されている。

 今冗談を言うとすれば、将来カメラマンは不要になるとか? これはすぐに現実になりそうだが。一方で、3Dデジタイズされたデータがあれば、レンズの描写も自由にシミュレーションできるというから、カメラすら要らなくなる時代も来るかもしれない。

 アップルが先日発表したiPhoneXでは、顔の3Dデジタイズ機能が入っていると言う。同じような機能がもっと高精細に簡単に全身でできるようになり、背景データがあれば、いつでも簡単に、行ってもいない場所で”撮影した”、リアルというより現実と寸分違わぬインスタグラムをアップできる。そんな虚構の世界がもうちょっと先に来ていると思う。写真とは正反対の虚構が支配する時代が来たら嫌だが、でも技術の進化はそうしたことも簡単にできてしまう方向に進んでいるのだから始末が悪い。

  そんな時代が来る前の今のうちに、写真撮影を存分に楽しんでおきたいところだが、その手助けをするには今回のソニーの最新 α+Gマスターのセットは強力な武器となるはずだ。

Pagination

  • Newer
  • Older
  • Page
  • 1

Utility

Calendar

08 2017.09 10
S M T W T F S
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

About

写真家・杉本利彦からのお知らせ、日常のメモなどを書きます。

Entry Search

Page

  • ページが登録されていません。