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2018年03月

CP+2018で気になったもの。

恒例のCP+メモ。2018年はそれほど目立った製品はなかったが、細かいものはいろいろと発見することができた。

CP+に出展している企業は毎年大体同じだが、珍しく日本の光学メーカーが新規出展していたので紹介しておこう。木下光学研究所。あまり聞いたことがないメーカーだが、創業者はかの富岡光学出身の光学設計者で、Tominon 55mm F1.2をの設計担当だった人物だという。会社として普段は産業用の光学製品を作っているらしい。でも、撮影用のレンズを作る技術があるので今回3本のMFレンズをリリースしたのを機に出展したという。

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レンズは「KISTAR」ブランドの85mm F1.4、55mm F1.2、35mm F1.4の3本。定番中の定番レンズで、すべてYASHICA/CONTAXマウントだ。このうち55mm F1.2は富岡光学の名玉Tominon 55mm F1.2を現代の硝材で復刻したもの。外観はかつて富岡光学がOEM供給していたコンタックスのプラナー風に。そう言われれば、35mmはディスタゴン風、85mmはプラナー風ですね。レンズ構成を見ても大体似ている。Y/Cマウントといっても連動ピンなどはなく、マウントアダプター専用ということで、EOSなどのボディが傷つくことはない。そのかわりY/Cマウントのボディにつけても実絞り撮影となる。

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トミノンもいいのだが筆者が気になったのは85mmの方。典型的ガウス型の構成で、絞り開放は甘く、F5.6まで絞ると超シャープになる、懐かしい特性のレンズだ。最近の85mmは絞り開放からシャープなのはいいけれど、いつもシャープだと飽きも来る。まあ、絞り開放が甘いのが嫌だと言っていた舌先が乾かぬうちに、今度は甘いのがいいという。全くわがままなカメラおやじです。

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 このレンズたち、価格は85mmの133,400円、55mm F1.2が134,100円、35mmの169,100円と、現代のMF大口径レンズとしてはいいところをついた価格になっています。オリジナルのTominon 55mmが中古市場でプレミア価格で取引されていることを考えれば、新品でこのお値段は結構お買い得かもしれません。

 

続いて、犬も歩けばSONYに当たる?広大なSONYさんのブースで噂の400mm F2.8のプロトタイプを発見。

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「G」のデッカいマークが目立ちます。

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シリアル番号がついているということは実写可能機か?

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見た感じはC社のレンズにも似ていますね。白鏡筒を採用した時点で似て来るのはしょうがないですね。プロトタイプなのでスイッチのところがのっぺらぼうになっていました。僕が使う場面はめったにないと思うけど、ラインナップにはあっていてほしいレンズですね。

 

ソニーさんのブースで目立っていたのは、米国の映像関連から送られたルミエール賞とエミー賞のトロフィー。

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どちらも金色に輝く天使様がモチーフなのだけど、どことなく尊い感じがにじみ出ていますね。欧米はこういうものを作らせるとうまいなー。映像業界というと映画などのソフトウエアの芸術賞は多いけれどそれを支える機材にまで賞があるのはいかにもアメリカらしい。

 

タムロンさんのブースではソニーEマウント用の交換レンズ28-75mm F2.8と一眼レフ用の70-210mm F4が展示されていた。

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28-75mmは確かソニーからも同じスペックのレンズが出ていたような。24-70mmよりちょっとだけ望遠側にシフトしたタムロン伝統の焦点域。一眼レフ用の現行モデルは普及価格帯なので、このモデルもリーズナブルだと嬉しい。

 70-210mmはちょっと昔に流行った焦点域で懐かしいですね。でもちょうど3倍のズーム比にするならこちらが正統派とも言える。70-200mmF2.8モデルとはっきり区別ができていい。画質面も期待が高まります。

 

マンフロットのブースで気になったのはマグネット式で着脱するフィルター。実は4年ほど前に同じアイデアの製品の製品化を検討したことがありました。その時はマグネットがレンズのAF機構に及ぼす影響を保証できないという理由から製品化を見送っていたのですが、この製品は大丈夫なのでしょうか?説明員の方は磁力はそれほど強くないので大丈夫と言っていましたが・・・・。

 構造は、マグネットを仕込んだベースフレームをまずレンズに取り付け、マグネットにつく金属でできたリングにフィルターを取り付ける。ベースフレームとリングはワンタッチで着脱できるので結果フィルターもワンタッチで着脱できるというもの。当然、レンズの前のフィルター枠は3枚重ねたくらいの厚さになるので、広角レンズではケラレが発生する場合がある。

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あとは、昨年話題になった窒素ガスの力でバランスをとるナイトロテックN8フルードビデオ雲台が気になった。下のT字型の金属部分を窒素ガスの圧力で押し上げてバランスをとる仕組みだという。

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説明員さんに実演してもらったが、パン棒のようなレバーを回してガス圧を調整するようだ。結構な回数回していたので、腕がパンパン?セッティングには時間がかかるのかもしれない。もう少し大型のものも出ると言っていた。

 

うーこれは何だ?映画マトリックスに出て来る敵の偵察・攻撃ロボ・センティネルを思い出しますねー。魚眼レンズがいっぱいついているので360度撮影するVRカメラということになります。

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え、もう8Kなんですか〜。と思ったら静止画8K、動画は4Kだそうな。今は動画で360度同時撮影の時代だそうで、QTVRでスティッチしていた時代が懐かしい。

 

おっと、シグマのブースでばったり。桑山さんだ。

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今回の一押しは、巨大な105mm F1.4だそうです。ニコンのやつよりずいぶん大きく、135mmくらいに見える。超望遠並みの三脚座とフードに注目。もうこれは普通の105mmじゃないですね。

センサークリーニングサービスはクリーンルームを持ち込んでやっていた。頼むのは簡単だけどやる方は大変だなー。

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さて、東芝さんはいつものSDカードのブースを拡張してアピールしてました。筆者が気になったのはメモリーの基盤となる300mmウエハー。

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これだけ見ると一般的な半導体と変わりないけれど実際の構造は、

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高層ビルみたいですが、こんな風に64層もの積層構造でできているのだとか。すごいですねー。

 

次に見たのはケンコーさんのブース。ソフトフィルターなのだけれど、最近はポートレートでなく星野写真で使われるそう。

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確かにファンタジックになりますね。科学の目とはちょっと視点が違うところにあります。で、新製品はソフト効果がハーフになったもの。多分、フィールド部分はソフトなしで、星空だけソフトにするということなんでしょうね。なかなかマニアックな商品です。

 

ケンコーさんは他にもいっぱい展示があります。まずは韓国のレンズメーカー・サムヤン。

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ソニーEマウントの35mm F1.4と50mm F1.4ですが、AF化してきています。これまではMFレンズ中心でしたがいよいよ本格的にAFレンズに乗り出すようです。一眼レフ用AFレンズも14mmが出品されていました。

 

お隣にはトキナーが!こちらも負けじと大口径路線ということで

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ソニー用の20mm F2も結構大きいですが、一眼レフ用の50mm F1.4は巨大でOtusならぬ”opera”とネーミング。レンズの質感はいい感じなので、このラインで統一したらいいんではないかと思いました。

 

中国市場は玉石混淆と言われますが、中国メーカーも年々洗練されてきていて、このメーカー・Mindviewは玉のほうと思われます。ハーフNDフィルターなら普通ですが左上のものは境界線を中央から少しずらしたもの。境界線を自由に設定したければ角形フィルターを使えばいいわけですが角形フィルターはかさばるのも事実。自分の構図が空とフィールドをだいたいフィルターのような比率にすることが多いならこういうフィルターもありですね。

 右下はハーフND2枚を重ねて回転できるようにしたもの同じ方向で重ねると2倍の濃度のハーフNDに、正反対の位置にすると中央だけ明るく、上下が暗い効果。この他角度によって覆い焼きや焼き込みのような効果が得られるというわけです。

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このメーカー、主力商品はバリアブルNDフィルターで、各フィルター径が用意されていました。バリアブルNDフィルターは広角レンズ使用時など斜めの光で透過率が変わってしまうものがあるのですがこの製品は大丈夫とのこと。その代わりお値段は77mm径で2万円前後と高価です。

 

MontKailashという中国の雲台・クイックシューブランドのブースで展示があった大判のピンホールカメラたち。大判用のピントグラスなどもあってちょっと懐かしい感じがしました。日本では大判をやる人は少なくなったけど、世界的にはまだまだ需要があるのでしょうね。

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こちらは台湾のフィルターメーカーSTCのブース。今年はレンズ交換式カメラのマウント後方に取り付けるフィルター群をイチオシにしていた。結構厚みのある構造でもミラーが上下する一眼レフでも取り付け可能とのことで取り付け方を聞いたら、ライブビューモードにしてミラーが上がってから取り付けるのだという。ライブビューを解除したり、ミラーダウンするモードで撮影した場合はエラーが出ると思うが、そういう条件付きで使うものということだろう。

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このところ元気なストロボメーカー・ニッシンからは電波通信で同調するグリップタイプのストロボが出品されていた。グリップタイプのストロボを使用する場合、電波式のアダプターを使うユーザーも多く、それなら最初からシンクロコードはやめて電波で行こうということらしい。

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バッテリーは単三または専用のカートリッジ式充電池で、グリップ内に収納できる。ストロボの高さはサイドにあるレールで自由に上下可能。コマンダーはたぶん別売りでAir10sで制御可能。一応シンクロターミナル装備で、カメラとつなげばマニュアル調光で同調させることもできるようです。ガイドナンバーは80(200mm時)ですが35mm時は48なので、往年のPE-480SGと同程度と思われます。LEDによるモデリング、スレーブ機能付き。

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グリップの内側がレールになっていて自由に上下できるようになっている。

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専用のバッテリーカートリッジを装着したところ。単三用のカートリッジは見かけなかった。

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このストロボで取材に突撃!ってことでしょうか? あ、機関銃みたいに連射できるってことですね。はは。

CP+2018はこれといったものがなかったのですが、マニアックな製品はさらにマニアックになってきている気がします。多様化の時代を反映していますね。また、旧メーカーは守勢である一方、新興メーカーの勢いはやはりすごい。すでに日本の用品メーカーのほとんどは製造を辞めてしまって、輸入ビジネスに転換していますが、アイデア商品は作り続けて欲しいですね。

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