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ニコン本社ビル訪問記・ニコンミュージアムオープン

 ニコンが約400億円を投じて建設していた本社ビルが2024年春に完成、7月末から稼働していたが、併設のニコンミュージアムがオープンしたので訪問してみた。品川駅から一駅、JR総武横須賀線・西大井駅からその名も”光学通り”を歩いて4分ほどの位置にある。カスケードを連想させるモダンな外観は三菱地所設計によるもので、なるほど丸の内の三菱ビル群のデザインともなんとなく共通性を見出せると思う。

 ニコン本社外観

 西大井駅から光学通りを進み、右手に以前からあるウエストビルを過ぎると左手にNikonの巨大なオブジェが玄関先に据えられた本社ビルが見えてくる。

 

1階側エントランス

メインエントランスの北側に廻ると1階エントランスがある。ニコンミュージアムへはこちらの入り口が便利だ。

 

メインエントランスホールは白を基調にした明るいイメージで入ってすぐに階段状のシアターが見える。エントランスホールの奥(写真とは反対側)には受付と待合、セキュリティゲートの奥には接客スペースや会議室等があるが、一般客はゲートから先には入れない。従業員の休憩・打ち合わせスペースは広大かつ余裕のある空間で、アメリカン・モダンをイメージさせる。

エントランス

エントランスホール このホールは建物の2階部分に相当し、右の階段シアターで1階方面に降りて行ける。

 

階段シアター

階段シアター 右上の壁面は全体が巨大なディスプレー装置になっていて映像作品を楽しむことができる。奥に1階エントランスが見える。この階段を降りて、右奥手前に回り込むとニコンミュージアムの玄関がある。

 

品川から移転してきたニコンミュージアム。品川時代の展示をベースとしながらも、内容を整理整頓して見やすい感じになっている。品川ではノクトニッコールの収差の少なさを見る展示があったが、新ミュージアムでは割愛されている。一方、フラグシップ機・F、F 2、F3のシステムバリエーションや業務機材、歴代NASA仕様のカメラなどの展示は追加されており、展示品の点数は大幅に増えているという。

ニコンミュージアム・エントランス

ニコンミュージアム・エントランス

ミュージアムエントランス

展示はブランドシンボルの変遷からスタート。

 

半導体コーナー

半導体装置コーナー

 

顕微鏡コーナー

顕微鏡・望遠鏡コーナー

 

ガラスインゴット

レンズの原料となる巨大なガラスインゴットを背後から。奥行き1mくらいあるのに空気の如くクリアで透明なガラスに驚かされる。 

 

カメラコーナー

カメラ展示コーナー。歴代のカメラが年代順に並ぶ。

 

Fisheye-Nikkor Auto 6mm f/2.8

言わずもがなのFisheye-Nikkor Auto 6mm F2.8。1972年の発売当時は受注生産で価格が10万円/mmと非常に高価だった。現在の取引価格は天文学的数字になっているらしい。

 

フラグシップコーナー

歴代フラグシップ機の特殊機材群。スライドコピアなどは新規に販売して欲しい人も多いと思うが。

 

 

NASAコーナー

歴代NASA納入機。F3の250フィルムマガジン付きのカメラがかっこいい。レンズにレバーがついているものは宇宙服でも操作しやすいようにしたものでしょうね。今じゃほとんど自動化、デジタル化されてこんな苦労はほとんど無用になってますが。

 

レンズコーナー

レンズ展示コーナー

 

レンズコーナー

レンズが鈴なりです。 

 

アニターほか

中央のNikkor 50mm F3.5、ライカのエルマーと瓜二つですね。

 

吉橋嘉五郎の手記

1930年当時の光学設計者・吉橋嘉五郎氏の研究ノート。清書したのだろうか、いずれにしても極めて几帳面に記されたノートだ。

 

筆者の場合はニコンF〜F2の時代からであるが、その変遷を懐かしく見ることができた。また、当時のカメラを実際に触ることができるコーナーもあり、懐かしいメカカメラの感覚を追体験することも出来る。全体に、品川時代の展示よりシンプルになっている気がするが、これから工夫が色々と加えられてゆくのであろう。まずは重要な収納物が収まった感じではあるので、ニコンファンに限らず、カメラファンであれば一度訪問する価値は十分にあるだろう。 

写真のちょっと不安な近未来

画像生成AI「DALI-E」の初期画面

 

 

 

 

 

 

 

 

 OpenAIの画像生成AI「DALI-E」の初期画面 DALL·E (openai.com)

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-65308190
AI作成画像、有名写真コンテストで最優秀賞を獲得 作者は受賞辞退 - BBCニュース

作者本人へのインタビュー記事(翻訳版)
https://ridingthedragon-life.translate.goog/2023/04/16/boris-eldagsen-ai-sony-world-photography-award/?_x_tr_sl=auto&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=wapp

 まずは上記のBBCニュースの記事を参照してほしいが、有名写真コンテストで最優秀賞に選ばれた二人の女性を写した画像が、実は画像生成系AIで作り出したもので、作者は受賞を辞退したというセンセーショナルなニュースだ。

 作者本人によると、当該コンテストの応募規定にはAI生成画像について特に何も書かれていなかったのでAI生成画像に対する準備ができていないと判断して、あえて応募してみたという。最優秀賞の受賞が決まった後、作品がAI生成画像であることを主催者側に告げ了解を得たが、写真賞をAI生成画像が受賞すると大騒ぎになるので、事前にこの作品がAI生成画像であることを主催者側から発表してほしいと申し出たが聞き入れられなかったと言い、作品がAI生成画像であることを公表せずに受賞プロセスが進められたことに疑問を抱いて作者は受賞を拒否したという。

 この出来事でのポイントの一つは、コンテストの審査員がこの作品がAI生成画像であることに気付いたか気が付かなかったかは別にして、優秀な写真作品として最高の評価を与えた事実だろう。これによりAI生成画像はすでに写真作品として十分評価に耐えるレベルにあることが立証されたとも言える。

 もう一つのポイントは、画像生成AIが作り出した画像の著作権はどこにあるのかというところ。作品を作った写真家なのか、画像生成AIを作ったプログラマーまたは運営会社なのか、画像生成の過程で参照した過去のだれかの写真画像にあるのか。

 コンテストの応募規定には、肖像権や他の著作物の権利侵害などがないことが規定されているが、AIが学習に使用した画像がもし他人の著作物であったとしたら問題はないのだろうか?

 文化庁によると、日本国内では現在著作物をAIに学習させるだけなら著作権者の許諾なく使用可能であるが、学習させたAIからの成果物を商用利用すると著作権侵害にあたる可能性があるそうで、この考え方の普及に努めていると言う。

 となると、少なくとも日本では、自分の作品だけを学習させたAIでない限り、AI生成画像をコンテストなどに応募するのはNGになるのではないだろうか?

 実際に海外ではある画像生成AIで明らかに参照されたと思われる絵画の原画作者が著作権を主張して、運営企業を訴える動きも出ていると聞く。イラストや絵画の場合は筆致や作画スタイルがあるのでそれを模倣されればわかりやすいので、これも必然の動きと思われる。

 一方、写真の場合は現実に存在する被写体が作品のソースになっているので、AIに学習されて模倣された場合、ソースとなった被写体の肖像権等は主張できたとしても、生成画像がコピーに近いものでない限り写真家が著作権を主張するのは難しいかもしれない。

 ここまで書いて、ふともう一つの画像生成法として3D画像データからのシミュレーション法を思い出した。これはカメラメーカーのレンズ設計者が、最近はレンズの描写性の画像シミュレーションソフトがよくできていて、レンズ設計の段階で実物と寸分違わぬ描写性で画質やボケのシミュレーションができると言っていたのを思い出したのだ。

 詳細は教えてもらえなかったが、おそらく3Dデジタイザかステレオ写真のようなものから被写体や背景の立体的な位置情報とその位置での色彩・輝度情報を3D画像データとして記録して、それが設計中のレンズ光学系を通過した時にどのように結像するかを計算するのだろう。

 この技術を用いれば、被写体と背景の3D画像データがあれば、どんな写真も自由に作ることができてしまうはずである。例えば人物が笑顔で立っている3D画像データがあったとして、観光地の背景の3Dデータ、そして光線状態のシミュレーターなどがあれば、容易にその人物が行ったこともない観光地での記念写真を生成できたりするだろう。言わばコンピュータグラフィクスの実写素材版のようなものである。

 筆者は当初、未来の写真の姿としてはこのような3D画像データから生成される写真画像が多くなると考えていた。世の中の全ての立体物や生命体等が3D画像データ化され、映画「マトリックス」の仮想空間のようにもう一つの日常とも言える仮想空間が再現され、座標とアングルや画角を指定すれば、意のままに所望する写真画像が生成可能になると考えたからである。

 しかし、今となっては単純に写真画像を得るという目的だけなら、AIによる画像生成の方がはるかに容易でローコストかつ手取り早く目的の画像が得られそうなので、そちらの進化の方が早いに違いない。

 いずれにしても、画像生成の技術は年々向上する一方だと思うので、こうして生成された画像と実際に撮影された写真をどう区別するのかというところがキモになってくる。

 例えば、写真の証拠性、ドキュメンタリー性を考えた場合、当然実写でない生成画像は排除されるべきであるが、クリエイティブな演出写真においては生成画像の活用は特に問題はないのではないだろうか。

 実写画像か生成画像か見分けがつかないとなると、現在活用されている防犯カメラやドライブレコーダーなどは証拠としては意味をなさなくなりそうだ。そうなると改ざんや偽装が不可能なタイムスタンプやウオーターマーク、NFTのようなものが撮影データに付記されるような仕組みが必要になるだろう。

 さらには、鑑賞者が希望する場合は真正写真と生成画像が見分けがつくように、何らかの目印をつける必要なども出てくるかもしれない。例えばニュース報道等でフェイク画像に一喜一憂するのは避けたいし、何かの写真を見た時真正写真なのか、生成画像なのかで見た時の印象はだいぶ変わってしまうと思う。

 例えばインスタグラムに投稿された写真がフェイク画像ということになれば、見る価値はほとんどなくなるのではないだろうか。

 写真コンテストでは生成画像以前にも、合成写真をどう扱うかという問題があり、合成・加工不可としている写真コンテストでは、当然生成画像も不可になるだろう。冒頭のニュースのコンテストのように表現方法に制限がない場合は、生成画像も応募可と明記するか生成画像専用のカテゴリーを設けるのも一つの方法だろう。

 発明されて以来「真」を写して来たはずの写真が、キーワードを入力するだけで簡単に作れてしまう時代、写真業界に与える影響は決して少なくないはずだ。何せカメラ要らずで写真が作れてしまうのだから。
 

B2クラウド、SATO サトウ L'esprit レスプリでうまく印刷できないトラブル

日常よく使うヤマト運輸のラベルを印刷するWEB上のソフトにB2クラウドというものがある。当初はInternetExprolerが推奨されていたが2022年6月15日のサポート終了に伴い半年前くらいから他のブラウザへの移行が推奨されていた。というわけで弊社でも移行してみたのだが、Edgeでは印刷できず、ChromeとFirefoxでは印刷可能なものの印字の位置やサイズがおかしかったり、文字がギザギザになる現象が起きてしまった。

 当初原因は、InternetExprolerの時は問題なく印刷できていたSATO Lesprit 412Vというサーマルプリンターを利用していることで、ヤマト運輸の推奨するOkabeのプリンターではないことかと思われたが、結論としてはそれが原因ではなかった。

 B2クラウドでは、印刷の不具合対策として印刷ツールなるものが用意されていて、B2クラウド上でインストールできる。まず印刷ツールをインストールして適用してみると、印字位置もおかしいが、印字全体が縮小された状態で印刷された。

 そこで、印刷ツールを設定解除して通常印刷モードで印刷すると二、三度ダイアログが表示されるが印字位置を調整して100%印刷をすればなんとか通常サイズで印刷はできるようになった。しかし、文字がギザギザに印刷されて綺麗でない。通常はデザリング設定をなしに設定にすれば綺麗になるのだが、プリンターの設定はなしになっている。プリンターの設定の細かなところまで色々と調整してみたが全く治らない。で、プリンターに渡される直前のダイアログのプロパティが開けたので見てみると、PDFを変換ソフトで変換したものをプリントしているようだ。ということはプリンターにビットマップ画像で渡している?としたらギザギザになるのは治らないはずだ。

 そこで通常印刷モードは諦め、ヤマト推奨の印刷ツールを再び設定して印刷すると印字は綺麗だが、やはりサイズが縮小されてしまう。ここで考えた。なぜ縮小されるのか?もしかしたら、用紙設定?と思いつき、SATO Lesprit 412Vのドライバーソフトを使って、新しい用紙設定を作ってみた。純正のOkabeのプリンターでは発払いのサーマルプリンター用紙が実際より大きい「HATU115.6x198.1mm」という設定になっているようなので、この通りの用紙サイズを新たに作った。以前はラベルの実寸サイズである112.0x177.5というサイズをカスタムで作っていたが、「HATU」のサイズに変更してみた。

 そうしたら、なんということでしょう。印字位置調整だけで全く正常に印刷できるようになった。Edgeで印刷できなかったのは用紙設定HATUがないためで、EdegeからでもChromeからでも問題なく印刷できるようになった。

 B2クラウドでサーマルプリンターを使う時のポイント

・B2クラウドの印刷ツールを設定

・用紙サイズ・HATU 115.6x198.1mm(印字可能範囲:104x198.1)の設定が必要

・デザリング設定:なし

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